オープンデザインについて ーはじめにー

オープンデザインという言葉を知っていますか?

オープンデザインは、オープンソースソフトウェアと同じように、デザインをオープン化しようとするオープンカルチャーの一種です。2011年頃から日本でも徐々に注目されるようになったデザインの分野での新しい動きなのですが、そもそもデザインをオープンにするということはどういうことなのでしょうか。オープンにすることにはどんな意味があるのでしょうか。そしてオープンデザインは今後広がっていくのでしょうか。このブログでは、そんなオープンデザインについて、特にオープンデザインのライセンスについて考えたことをメインテーマにまとめていきます。

そもそもモノづくりのフレームワークを時代的に俯瞰してみますと、19世紀は「クラフト(手工業)」の時代、20世紀は「マス•プロダクション(大量生産•大量消費)」の時代、そして21 世紀は「マス•カスタマイゼーション(多品種変数生産)」の時代と言うことができると思います1 。アメリカの未来学者アルビン•トフラーがその著書『第三の波』2 の中で、情報技術の進歩は供給する立場と消費する立場の境界を曖昧にすると論じていますが、これまでは無体物であ るソフトウェアやコンテンツの領域においてその現象が生じてきました。理念的には生産者も利用者 もどちらもが作り手であるオープンソースソフトウェアや、オープンコンテントといった オープンカルチャーが生まれて、拡大してきたのです。

近年の「マス•カスタマイゼーションの時代」には、CNC技術を用いた工作機械がFabLabの活動などによって、徐々に民主化されてきています。つまり、これまでは企業の工場や大学の研究室にしかなかったようなコンピュータと接続して物質を加工できる高度な工作機械が、日常的に使うことができる環境が徐々に出来上がってきているのです。また民間レベルでも3Dプリンターなどを使った物質化サービスや、Arduinoといったラピッドプロトタイピングツールの普及によって、オープンソース ハードウェアやオープンデザインといった文化が生まれ、有体物においても供給する立場と消費する立場の境界が無体物の領域と同様に徐々に曖昧になってきているといった現状があります。さらに2011年11月には499米ドルで購入できる3Dプリンタも登場していますので4 、現在のプリンターのように、1家に1台3Dプリンタが普及する時代もそう遠くはないことが容易に想像できます。そんな時代がきたら、ますます有体物において、共有する立場と消費する立場の協会が曖昧になっていくことになるでしょう。

CNC技術を用いた工作機械が今後発展していくことで、パーソナルファブリケーションの時代がやってくるとマサチューセッツ工科大学のニール•ガーシェンフェ ルド教授は予言しています。これはかつて「大型汎用コンピュータがパソコンに代わったのと同様に、やがて世間一般の人々がパーソナルファブリケータ (PF)という道具を介して工作機械の機能にアクセスできるようになるだろう。しかも、この変革によって人々が個人のものにするのは、ビットから構成されるコンピュータのデジタル世界ではなく、原子から構成される物質の世界であるため、その意味はコンピュータ の変革よりはるかに大きい」のです。また「PFは機械を作る機械である。言ってみれば、画像の代わりに「もの」を印刷するプリンタのようなものだ。ここで言うパーソナルファブリケーション(個人的なものづくり)とは、三次元の構造物を創り出すことだけでなく、ロジック、センサー、作動部、表示など、機能する完全なシステムをつくるのに必要な全ての要素を統合することである。PFがあれば、欲しいものを探しまわり、注文する必要はなく、製品の仕様書をダウンロードするか自分で書いて、設計図と原材料をファブリケータに放り込むだけで済む」3 とも述べており、将来的にはPF が一家に一台あり、必要なときに必要な人が必要なものを必要な分だけ生産する時代が来 ることを予想しています。これは非常に画期的なことで、PFが普及した未来では、製造、流通のあり方が大きく変わることになります。

ただし、これはパーソナルファブリケーションが進むことで、これまでの大量生産•大量消費型の製造や流通が無くなるということを意味しているのではないと僕は思います。つまり、これまでのように大量生産•大量消費型の製造や流通ではフォローできなかった生活者のニッチな需要をパーソナルファブリケーションが満たすのであって、マスプロダクションとパーソナルファブリケーションは補完関係にあるということです。

さて、パーソナルファブリケーションというモノづくりの動きはますます拡大していくものと考えられます。ですが、必要なものを、必要が人が、必要な分だけ作ることができるようになるとしても、0から自分の欲しい物を作ることは容易なことではありません。誰もが0から自分の欲しいモノを作ることはできないでしょう。

そんなときに、ネット上で公開されている誰かが作ったモノの設計図を利用して、自分用にカスタマイズして、そのまま作ることができたら、とっても便利だと思いませんか?このときに重要となってくるのが、オープンデザインであったり、オープンソースハードウェアといった有体物のオープンカルチャーなのです。オープンになっているモノが多ければ多いほど、僕たちは自由にそこから欲しいものを選択し、より自分が欲しいカタチに合うようカスタマイズして、手に入れることができるようになります。0から作り上げるよりもずっと簡単ですよね。

そんなオープンデザインですが、新しい領域だけに考えなければならないことも数多くあります。特に共有時のオープンライセンスです。このブログで、オープンデザインとそのライセンスいう、新しい領域のことを皆様に少しでもご紹介できれば幸いです。

 

1 田中浩也著 「アーキテクチュアル•コーディング」 『設計の設計』2011/9/10

2 アルビン•トフラー『第三の波』中央公論新社 1982

3 ニール•ガーシェンフェルド『ものづくり革命ーパーソナル•ファブリケーションの夜明けー』ソフトバン ククリエイティブ株式会社 2006

4 Printrbot: Your First 3D Printer http://www.kickstarter.com/projects/printrbot/printrbot-your- first-3d-printer

Proudly powered by WordPress
Theme: Esquire by Matthew Buchanan.